野生会議99の
小さなお茶会。 
cafe 99 

(カフェ ぺクス)


ときどき、

どこかに、

オープンします。

会いたいあの人、

話を聞いてみたいこの人と、

お茶して、

おしゃべりして、

つながる 

ゆるやかな時間。


★cafe99をめぐる物語や情報はこちらのページにおいでくださいませ★



店主(野生会議99の人)よりお知らせ


5月5日(日)15時~
妹尾直子さん トミカワマイザさん
をお招きしての「糸を紡いで時を織る話」

互いに、自分の目には見えない大切なものをそっと贈りあうような

心がホッとするような場をみなで分かち合ったような気がします。

cafe99に集った皆さん、ありがとう!!




       

    


[場所]   

大岡山 

Tandy ga tandhi 

タンディガタンディ

東京都大田区北千束1-52-6-2F

大岡山駅から徒歩2分


[参加費] 

1000円 (1ドリンク付) 

おやつ、飲み物、どんどん持ち寄りしましょう。 

心を込めて、いろんなもの、贈り合いましょう。


【問い合わせ・申込】 

 

99yasei@gmail.com


 ※当日 思い立っての飛び込み参加も大歓迎 



「糸を紡いで時を織る話」 by 野生会議99 


序章 マイザ/物語を開く声


ふかふかで、綿菓子のように柔らかい黄色いモヘア。わたしが初めて触れた毛糸は、小さな街の手芸屋さんで、祖母と2人で選んだものだった。夏休みの暑い盛りだというのに、なぜモヘアなのかと今更ながら少し妙だなと思うけれど、もしかしたら、冬糸の売れ残りだったのかもしれない。

 祖母とわたしは、扇風機の前に陣取って、並んで座った。ふかふかの黄色い毛糸を手にとって、祖母は次々にバービー人形のスカートやベストを編んでくれた。一本の細い細い毛糸が、かぎ針と祖母の手に吸い込まれながら、三つ編み状に編まれ、段が増していくごとにフリルが現れ、やがてスカートになった。わたしは、祖母の手元を食い入るように見つめた。

  祖母は、毛糸で犬もつくった。ワイヤーをくねくねと折り曲げて骨組みをつくり、毛糸でポンポンを量産し、それを組みたてると黄色い綿菓子のプードル犬が生まれた。小さな赤いフェルトが舌になり、プラスチックの目玉はきらりと光を放った。糸に命が宿った瞬間。まるで魔法のようだと思った。

 糸から、人は様々なものをつくれるんだということを、はっきりと認識したのはそんな8才の夏休みのことだ。当時は、糸と人との間に深い歴史や神話があることを知りもしなかったけれど、祖母から教えてもらったことには、幼いながらも特別な意味があるとわかっていた。なにせ、一本の糸から服や犬が生まれる「創造の瞬間」に立ちあったのだから。その驚きとインパクトは、いまでもわたしの中に深く刻まれている。

 糸を紡いで、編んで、織って、縫って。人は、太古から糸で身を守るための衣をつくってきた。忘れがちだけれど、今わたしたちが身につけているものは、元々は別の命だった。コットンならば綿花、ウールであれば羊、シルクであれば蚕、和紙の糸だって、元を辿れば植物の繊維だ。別の命を糸にして、糸からさらに別のなにかにつくりかえる。そういう連続性のある営みは、先人たちがわたしたちに伝えきた、命を守るための技術であり、魔術でもある。

 実のところ、当時のわたしたちにとって糸はコミュ二ケーションのきっかけでもあった。8才のわたしはすでにポルトガル語を失っていて、祖母も5年ぶりに会う言葉の通じない孫とのやりとりに戸惑いを覚えていたに違いない。糸をめぐる技術の伝承は、うわべだけの言葉では伝えきれないものをわたしに残していった。編み物からはじまった糸を巡る旅は、今では糸を自分でつむぐところまで遡ってきたけれど、糸との出会いは祖母がわたしに残した大きな遺産であり、言葉が通じなかったわたしたちを縒り合わせるきっかけになったのだった。